AIでペット保険の保険金支払いの事業費率を低減 - Natic | Creating the Future with Applications – 双日テックイノベーション
AIでペット保険の保険金支払いの事業費率を低減
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はじめに
2021年までの直近10年間で収入保険料が5倍以上の1,000億円を超える市場に成長したペット保険業界。一般社団法人ペットフード協会が毎年実施している全国犬猫飼育実態調査(2022年調査)によると、国内における犬・猫の飼育頭数は合計で約1,605万頭となっており全体頭数は10年前から減少傾向となっていますが、新規飼育頭数は2017年以降ゆるやかな増加傾向が続いていることから、新規に飼育を開始する方がペット保険市場を押し上げていると考えられます。また、動物病院での治療費は社会保険が適用されない自由診療のため、重い病気やケガの場合に医療費が高額になることへの不安も加入の後押しになっているようです。将来性についても、海外ではペット保険の加入率は30%以上と言われており、日本では10%程度であることから今後も成長が期待されています。
ペット保険専業保険会社の業績推移と課題
ペット保険専業のアニコム損害保険(以下、アニコム)、アイペット損害保険(以下、アイペット)、ペット&ファミリー損害保険(以下、ペット&ファミリー)の3社における過去5年間(2017年度~2021年度)の業績推移を各社のディスクロージャー誌から調査し、現状の課題を考察してみました。
まずは業績データを確認してみましょう。正味収入保険料では3社とも対前年10~20%以上の高い成長率を毎年続けていますが、正味支払保険金も比例して上昇している状況です。一方で、ペットの加齢と合わせて病気・ケガ等のリスクが高まるため、商品改定や引受制限等によって適切にロスコントロールされていることが、損害率が横ばいもしくは緩やかな上昇で推移していることから伺えます。
出典:各社ディスクロージャー資料より日商エレクトロニクス作成
また、コンバインドレシオは、損害率の上昇を事業費率の低減でカバーするかたちで90%前後の推移となっています。今後も保有契約のペット年齢は毎年上昇して必然的に損害率も高くなるため、事業費率の抑制に向けた業務効率化やDXを続けていくことが不可欠です。
出典:各社ディスクロージャー資料より日商エレクトロニクス作成
2割を占める直接の保険金請求を減らせるか?
ペット保険専業2社とネット生命保険大手・ライフネット生命保険の終身医療保険の保有契約件数と保険金請求件数を比較してみました。もちろん、ペットと人間ではそもそもの医療技術等が異なりますが、下表の通りペット保険は人間の医療保険よりも1契約あたりの保険金請求頻度が非常に多く、少額かつ膨大な数の保険金請求を対応していることが分かります。
■保有契約件数と保険金請求件数の比較(2021年度末時点)
保険会社名 | 保有契約件数 | 保険金請求件数 |
---|---|---|
アニコム損害保険 | 1,028,831件 | 4,055,176件 |
アイペット損害保険 | 728,724件 | 1,710,892件 |
ライフネット生命保険 (終身医療保険) |
138,749件 | 13,586件 |
出典:各社ディスクロージャー資料より日商エレクトロニクス作成
また、アニコムならびにアイペットのディスクロージャー誌には、保険金を提携病院での窓口精算が8割、非提携病院での受診等により契約者から保険金請求書を保険会社に直接送付されるケースが2割と記載されています。保険会社に直接請求される年間件数は、アニコムで約80万件、アイペットで約36万件に及びます。Web保険金請求やLINE等を活用したペーパーレス化も一部で進んでいますが、全ての工程を自動化することは困難なため、提携病院での受診を増やす施策を同時並行で進めることが事業費率を低減する近道と考えられます。提携病院の利用促進によって支払保険金を抑制している事例としては、海外旅行保険が挙げられます。海外の病院では日本の健康保険を利用することができません。欧米諸国等では医療費が高額になる場合があり、発熱で受診しただけで10万円を超える医療費になることもあります。そのため、契約者が現地で支払う経済的負担の軽減、および、保険金請求対応工数の低減等を目的として提携病院の利用を積極的に推進しています。
その他、AI-OCRやRPAによる自動化ソリューションによる業務改善については、以下をご参照ください。
※日商エレクトロニクスによるRPA導入事例は、こちら
AI活用により提携病院の利用を促進、直接請求件数を低減する
保険金支払データにはペット品種、性別、年齢、傷病内容、病院情報等の有用性の高い情報が含まれているため、このデータを分析してAIに学習させ、病院ごとに得意なペット品種や傷病等を洗い出し、契約者ごとにパーソナライズされた病院レコメンドAIを開発することができます。例えば、初めてペットを飼う方がかかりつけの動物病院を選ぶポイントは、「家から通いやすい」、「医師やスタッフの対応」、「診療価格の透明性」、「ご近所さんの評判」などが挙げられますが、これらの様々な情報を収集するのは非常に手間と時間がかかります。病院レコメンドAIで動物病院探しをアシストできれば、契約者の顧客体験向上につながります。また、既契約者に対しては、LCCによるペット同乗も始まり、市場が急成長しているペット同伴旅行における旅先での病院探しにも役立てられるかもしれません。そして、最終的には提携病院での受診率が上がることによって、保険金請求業務のコスト低減(事業費率の低下)につながります。
著者プロフィール
アプリケーション事業推進部
ビジネスデザイン課 木村隆二
非対面決済プラットフォーム企業においてネット保険商品への導入支援を経験した後、損害保険会社で営業企画、商品・サービス企画、CX推進、他損保との業務提携等を経験。
前職では大手モーゲージバンクのデジタル営業推進の責任者として従事、2022年に日商エレクトロニクスに入社。
趣味は、トレイルランニング。
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