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クレジットカード事業でのLTV活用 - Natic | Creating the Future with Applications – 双日テックイノベーション

クレジットカード事業でのLTV活用

ltv for credit top クレジットカード事業でのLTV活用

本記事で紹介したいこと:

ここ数年のECショッピングの急激な成長により、ECを取り巻くソリューションやビジネスモデルに注目が集まっています。
クレジットカードにおいても従来の店頭や郵送による入会からWebやアプリ入会の比率が高まってきており、ECショッピングの決済とクレジットカードが切り離せなくなっている現在、ECのマーケティング手法を参考にすることはとても重要だと感じています。その中でも近年ではCV率(Conversion Rate)からLTV(Life Time Value)という指標が注目され、小売事業者ではこれらをKPIとする企業が多くなってきました。

しかし、改めて考えてみますと、言葉は違えど何十年も前から最もLTVを重要視してきたのがクレジット業界ではないでしょうか。
本記事では、クレジットカード事業におけるLTVの活用についてご紹介したいと思います。

目次 Table of Contents

  1. 新規会員獲得はコストがかかる
  2. 新規会員獲得だけに注力していればいいのか?
  3. LTVを再考してみよう
  4. まとめ

1. 新規会員獲得はコストがかかる

クレジットカードのイシュイングの場合は、いかにショッピングやキャッシングをリボ払いで繰り返し長期にわたり利用していただくことが命題であり、まさにLTVの算出式(単価×利益率×件数×期間)と同じことが言えるのですが、本来のLTVは(単価×利益率×件数×期間)-(新規会員獲得コスト+既存会員維持コスト)で算出されます。
これまでのカード業界では会員数重視であったため、このコスト部分があまり意識されてこなかった経緯があります。
しかし、Webマーケティングでよく使われる「1:5の法則※1」や「5:25の法則※2」のとおり、新規会員獲得には大きなコストが発生するのが実態です。

※1 1:5の法則 … 新規のお客様を獲得するには、既存のお客様の5倍のコストがかかるという法則
※2 5:25の法則 … 顧客離れを5%改善すれば、利益が最低でも25%改善されるという法則

2. 新規会員獲得だけに注力していればいいのか?

会員数が重要な指標であることに変わりないのですが、昨今、これまでのカード業界の経験値だけでは捉えきれない要因が増えてきているのも事実です。

特にキャッシュレスの促進によりトランザクションが増えることは業界としてとても良いことですが、ネットワーク使用料や不正対応を筆頭に、どうしても固定でかかるコストや顧客囲い込みのためのポイント負担コストなどはトランザクションの増加と共に増えていきます。
さまざまな要因により「利益増加 = 新規顧客獲得」だけではなくなってきた今、収益への貢献度を計る意味でもLTVは重要だと考えます。

従来 会員数の増加 = 売上の増加による利益の増加
LTV活用 LTVによる会員のセグメント化 = コストの適正配分による利益の増加

3. LTVを再考してみよう

新規顧客獲得以外で収益へ貢献するとなると、例えば、LTVの高いロイヤル会員には高いサービスを提供し、休眠会員で利用見込みのない会員は更新を見極める、また利用頻度が高くても低単価ばかりで逆ザヤとなる会員のマーケティング方法を見直すなど、算出されたLTVスコアから改めて顧客のセグメントを行い、収益貢献度合いによりマーケティングのレベルを細分化するなど、ドラスティックな対応を考える必要があるかもしれません。

例えば、スマホアプリのご利用がある会員様にはバーチャルカードへの切替を提案して発券コスト削減を促進したり、さらにご利用を増やしていただきたい優良会員様にはキャッシング増枠を提案するなど、ターゲット顧客の抽出にAI分析を取り入れます。

例1)LTVスコアでのセグメントによるランク分けとマーケティングコスト配分

継続性を重視したLTVスコアによりランク分けし、ランクに合わせたマーケティング施策を実施する。

LTVスコアでのセグメントによるランク分けとマーケティングコスト配分
LTVスコア高 継続性重視「キャッシュバック」「割引やポイント付与率キャンペーン」「ゴールド、プラチナ促進」
LTVスコア小 利用頻度のUp「公共料金やサブスク利用の促進」「居住地に密着した商品やサービスの紹介」
休眠 利用促進アプローチor更新可否判断

例2)利用額と利用頻度を基にした簡易LTVスコアを会員にも共有し、スコアに応じてのサービスを展開(航空会社や通信事業者方式)

月間の利用金額と利用回数、商品内容(公共料金や保険など)からスコアを月次で算出、付与スコアは発生月より1年間保有とし、スコアに応じてサービスを差別化する。通常のカード種別(ゴールドやプラチナ)とは別で、利用しないと付与されない特典とする。

利用額と利用頻度を基にした簡易LTVスコア
0~ 10,000スコア 一般会員 通常のカードサービス内容
10,001~ 50,000スコア 梅会員 ポイント付与率0.1%Up
50,001~100,000スコア 竹会員 ポイント付与率0.3%Up、竹会員以上限定セール、○○先行予約販売
100,001スコア~ 松会員 ポイント付与率0.5%Up、松会員限定セール、○○先行予約販売

また債権回収業務でも初期延滞においてLTVを活用することにより、LTVの高いお客様にはご案内のプライオリティを上げ、早期正常化による利益貢献を図ることも重要かもしれません。

4. まとめ

先日、知人がクレジットカードの期限更新ができなかったそうです。彼は支払いも遅れたことはないし、信用情報も問題なく、個人属性も変わっていませんでした。ただし、そのクレジットカードはメインのカードではなく、年に数回ほど数百円単位で○○Payにチャージするだけだったそうです。
実は、彼が持っていた大手のクレジットカードでは、すでにLTVに近い考え方で会員をセグメントに分けて更新判断をしているのです。

新規会員の獲得が従来よりも難しくなってきた今こそ、利益貢献のための指標としてLTVは重要になってくると思います。
上記の内容は、長年カード業界に携わった方であれば体感的に理解されている内容かもしれませんが、LTVの可視化にトライし、LTVスコアによるセグメント別のマーケティングを実践されてみてはいかがでしょうか。

最後に、LTVを活用する上で当社が提供できる製品をご紹介します。
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記事担当者::アプリケーション開発部一課 笠原 英司
投稿日:2022/11/01

著者プロフィール:

カード会社の業務センターおよび情報システム部門に従事した後、ASPベンダーで新規カードビジネスの立ち上げや外資系ITベンダーで決済ビジネスの支援、クレジットカード向けプロセシング会社では事業責任者としてBPO事業を推進。

コンサルティング業務として、アクワイアラ向け業務プロセス、イシュア向け業務プロセスなど、大手コンビニ、地銀、ネット銀行などのさまざまなプロジェクトを推進。

2022年に日商エレクトロニクスに入社し、クレジットカード関連の社内外のコンサルティングに従事中。