
こんにちは、穂苅智哉と申します。
「レジリエンス経営」という言葉を耳にしたことがある方はどのくらいいるでしょうか。
レジリエンス(Resilience)とは、困難や危機に直面した際の「回復力」や「復元力」のことです。ビジネスの文脈では「予期せぬ危機や変化に対して、事業を継続し、迅速に回復・適応する組織能力」を指します。
コロナ禍、ロシア・ウクライナ情勢、紅海問題など、この数年間で企業を取り巻く環境は劇的に変化しました。そしてこれからもダイナミックな変化は次々と起こってくるでしょう。
となると、かつて重視された「効率性の追求」だけでは、もはや企業の持続的成長は望めません。むしろ、危機に対する「回復力」こそが、これからの時代の競争優位の源泉となってきます。
特に、グローバルなサプライチェーンを持つ商社業界では、世界各地で発生する様々なリスクの影響を直接受けやすく、レジリエンス経営の重要性がより切実な課題として浮上しています。
商社におけるレジリエンス経営の必要性
商社がレジリエンス経営を必要とする理由は、その事業特性にあります。商社は、「世界を股にかけるビジネス」であり、一つの地域や業界のリスクが全社に波及する可能性を常に抱えていると言えます。
例えば、2023年後半から続く紅海問題では、フーシ派による船舶攻撃により、多くの商社が主要な物流ルートの変更を余儀なくされました。スエズ運河経由から喜望峰経由への迂回により、輸送日数は10日以上延び、輸送コストも大幅に増加。さらに円安の進行が、この状況に追い打ちをかけています。
このような複合的な危機に対して、「事前に完璧な対策を講じる」ことは正直現実的ではありません。むしろ重要なのは、危機が発生した際に「いかに迅速に状況を把握し、的確な判断を下し、事業への影響を最小限に抑えながら回復するか」という回復力です。
また、一つの大型案件の頓挫が業績に大きな影響を与えることもあります。地政学的リスク、為替変動、相手国の政策変更、自然災害など、コントロール不可能な外部要因によって案件が影響を受けた場合でも、代替案の迅速な検討や、リスク分散による全体最適化が求められます。
ERPによるレジリエンス経営の実現
レジリエンス経営を支えるポイントは、「情報が可視化されていること」「迅速な意思決定ができる状態にあること」「リスクに対応できる柔軟な業務プロセスがあること」です。そして、これらすべてを支える基盤となるのがERPシステムです。
まず情報の可視化というのは、世界各地の事業状況をリアルタイムで把握できることが必要です。どの案件がどの段階にあるか、どの地域でリスクが顕在化しているか、在庫や資金の状況はどうかを、経営陣が一目で理解できるダッシュボードがあるべきです。
次に、迅速な意思決定のためには、過去のデータに基づく分析だけでなく、様々なシナリオでのシミュレーションができることが重要です。「もしこの港が使えなくなったら」「もし為替がさらに変動したら」といった仮定に基づいて、瞬時に影響度を計算し、複数の対応策を比較検討できることです。
そして柔軟な業務プロセスについては、標準的なオペレーションから緊急時対応への切り替えがスムーズに行える仕組みが求められます。平時は効率性を重視し、危機時は迅速性と安全性を優先するといった、状況に応じたプロセスの使い分けです。緊急時にも従来のオペレーションから抜け出せない場合、危機を脱するのに時間とコストが多くかかってしまうことになりますから。
商社・卸業が目指すレジリエンス経営に向けて
ここまで説明してきたレジリエンス経営とそのためのERPシステムですが、執筆時点ではシステム側の対応は限定的でもあります。
しかし、今後の技術進化によって近い将来にはレジリエンス経営を前提としたERPシステムが整備されていくのではないかと思います。
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