2026年となり、総合商社は空前の投資時代を迎えています。三菱商事は2028年3月期までに4兆円規模の投資を計画し、1月には米国エネルギー会社の買収に過去最大となる1兆2000億円を投じました(※1)。三井物産は1.8兆円、伊藤忠商事は1兆円規模と、七大商社合計で総額12兆円を超える巨額投資が動き出しています(※2)。資源、インフラ、デジタル、コンテンツと多岐にわたる投資先。しかし、この投資ラッシュの裏側で、商社が直面している深刻な課題があります。それは「投資案件をどう管理するか」という、極めて実務的な問題です。
(※1)https://diamond.jp/articles/-/381849
(※2)https://diamond.jp/articles/-/377878
巨額投資時代に浮上する「案件管理」の盲点
商社の投資案件は、製造業の設備投資や一般企業のプロジェクト管理とは性質が大きく異なります。一つの案件が数百億円から数千億円規模に及び、投資期間は10年、20年と長期にわたります。さらに複雑なのは、案件ごとに収益構造が異なる点です。資源案件であれば市況価格に収益が左右され、インフラ事業では長期の運営収益を見込み、スタートアップ投資ではイグジット(株式売却)のタイミングが収益を決定します。
こうした多様な案件を並行して進める中で、経営層が最も知りたいのは「各案件が今、どのような状態にあり、計画通りに進捗しているか」「投資した資金に対して、どれだけのリターンが見込まれるか」という情報です。ところが多くの商社では、案件情報が部門ごとにバラバラに管理され、全社横断での把握が困難になっています。エネルギー部門はエネルギー部門独自のExcelで管理し、デジタル事業部はまた別のツールを使う。財務部門は会計システムで数字を追っているが、現場の進捗状況はリアルタイムで反映されない。この「サイロ化」が、巨額投資時代の大きな盲点となっています。
投資案件管理に求められる「PPM」という視点
こうした課題を解決するために必要なのが、「プロジェクトポートフォリオマネジメント(PPM:Project Portfolio Management)」という考え方です(※3)。PPMとは、組織が抱える複数のプロジェクトや投資案件を戦略的に一元管理し、限られた経営資源を最も効果的に配分するための手法を指します。
商社の文脈に置き換えると、PPMは次のような機能を提供します。
第1に、全投資案件の可視化です。エネルギー、インフラ、デジタル、コンテンツなど異なる領域の案件を、統一されたフォーマットで一覧化し、進捗状況、投資額、期待リターン、リスク評価を俯瞰できるようにします。第2に、案件ごとの優先順位付けです。戦略的重要性、収益性、リスクレベルといった複数の指標に基づいて案件を評価し、どの案件にリソースを集中すべきかを判断します。第3に、リソース配分の最適化です。限られた投資資金と人材を、最も効果的な案件に振り向けることで、ポートフォリオ全体の収益性を最大化します(※4)。
しかし、PPMの概念を理解することと、それを実際に運用することは別の問題です。商社のように多様な事業領域を持ち、グローバルに展開する企業において、PPMを実現するには、それを支える強固なシステム基盤が不可欠となります。
(※3)https://www.wrike.com/ja/project-management-guide/faq/what-is-project-portfolio-management-ppm/
Excel管理の限界から分かる、「見えない」投資リスク
多くの商社では、投資案件の管理にExcelなどが使われているケースもあります。担当者が個別にシートを作成し、案件の進捗や収益予測を記録する。一見、柔軟で使い勝手が良いように思えますが、これには重大な欠陥があります。
まず、情報の分断です。各部門が独自のフォーマットでExcelを作成するため、全社で統一された視点からの分析ができません。経営会議で各案件の状況を報告する際、データのフォーマットが異なるため比較が困難になります。次に、リアルタイム性の欠如です。Excelは更新のタイミングが属人的で、「この数字は先月のものなのか、今月のものなのか」が曖昧になります。投資判断に必要な最新情報が、経営層に届くまでに数週間かかることも珍しくありません。
さらに深刻なのは、財務データとの連携がないことです。案件の進捗状況はExcelで管理されていても、実際のキャッシュフロー、損益、財務インパクトは会計システムに記録されています。この二つが連携していないため、「この案件は計画通り進んでいるように見えるが、実際の収益はどうなっているのか」という重要な問いに、即座に答えることができません。投資案件の管理と財務管理が分離している状態は、巨額投資時代においては極めて危険です。
ERPが実現する「投資案件の統合管理」
ここで威力を発揮するのが、ERPシステムです。ERPは、受発注、在庫、会計といった基幹業務を統合管理するシステムとして知られていますが、実は投資案件管理においても強力な機能を持っています。
ERP上で投資案件管理を実現すると、いくつかの利点があります。
まず、案件情報と財務情報の統合です。各投資案件の進捗状況、投資額、収益予測がERP上で管理され、同時に実際のキャッシュフロー、損益計算、財務諸表と自動的に連携します。これにより、「計画と実績のギャップ」がリアルタイムで可視化されます(※5)。
また、全社横断での案件管理です。エネルギー部門の案件もデジタル事業部の案件も、同一のERPプラットフォーム上で管理されるため、経営層は部門を超えて全投資案件の状況を統一フォーマットで把握できます。案件ごとの投資額、期待ROI(投資利益率)、リスクレベルを横並びで比較し、ポートフォリオ全体の健全性を評価できます。
もう1つ、意思決定の高速化です。ERPに蓄積されたデータをもとに、ダッシュボードで案件の進捗状況や収益性をリアルタイムに可視化できます。「どの案件が遅延しているか」「どの案件が当初の収益目標を下回っているか」「追加投資が必要な案件はどれか」といった問いに、即座に答えることができます。これにより、経営判断のスピードが劇的に向上します。
(※5)https://info.isi-grp.co.jp/blog/grandit/how-to-maximize-roi
投資時代を勝ち抜くシステム基盤の構築
三菱商事の4兆円、七大商社合計12兆円超という巨額投資は、単なる資金の投入ではありません。それは、商社が次の10年、20年の収益基盤を構築するための戦略的な布石です。
これは、大手総合商社だけでなくどの商社や卸業をされている企業にも当てはまるところがあると思います。
しかし、投資した資金が確実にリターンを生むかどうかは、投資後の管理にかかっています。
投資案件をExcelや個別システムでバラバラに管理し、財務データとの連携がない状態では、投資の効果を正確に測定することも、問題が発生した際に迅速に対応することもできません。巨額投資時代だからこそ、全案件を統合的に管理し、財務と連携させ、リアルタイムで意思決定を支援するシステム基盤が必要です。
ERPによる投資案件管理の実現は、商社DXの中でも最も見落とされがちでありながら、最も重要な領域の一つと言えるでしょう。投資の成否を分けるのは、投資先の選定だけではありません。投資後の管理体制こそが、真の競争力を決定します。
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