商社ERPトレンド紹介 第52回 「2027年問題」 外資ERPのアドオン問題から抜け出す「Fit to Standard」

 2027年末、日本国内の多くの企業が使用する「SAP ERP 6.0(ECC 6.0)」の標準保守サポートが終了します。この期限はかつて2025年末とされていたものが延長されたものであり、「SAP 2027年問題」として、いま基幹システムの刷新を迫る経営課題として急浮上しています(※1)。

国内でSAP ERPを採用している企業は約2,000社にのぼると言われており、商社・卸売業もその主要な利用層の一つです(※2)。しかし、「SAP S/4HANAへ移行すればよい」と単純に割り切れない理由があります。長年にわたって蓄積されたアドオン(独自開発機能)の多さが、移行コストと期間を大幅に膨らませているからです。

そこで今回は、SAP 2027年問題の実態と、外資ERPのアドオン問題が商社・卸売業にもたらすリスク、そしてその解決策として注目される「Fit to Standard」という考え方と、国産ERPによる実践方法を解説します。

(※1)https://www.nec-solutioninnovators.co.jp/sp/contents/column/20220325_sap-2027-issue.html

(※2)https://www.tcs.com/jp-ja/trends/the2027-problem-learning-from-failure-cases

SAP 2027年問題とは何か?迫るタイムリミット

SAP ERP 6.0(ECC 6.0)は、2000年代後半から2010年代にかけて日本企業の基幹システムとして広く普及した製品です。製造・流通・商社・卸売など幅広い業種で採用されており、現在もその基幹業務を支え続けています。

ECC 6.0の保守終了が意味するもの

2027年末をもって標準保守が終了すると、セキュリティパッチの提供・法改正対応・障害サポートがすべて対象外となります。有償の延長保守オプションを利用すれば2030年末まで継続は可能ですが、それは「問題の先送り」に過ぎません。2027年末というタイムリミットは、システム刷新の意思決定を今すぐ行わなければならない理由として、経営レベルの課題となっています(※1)。

日本国内約2,000社が直面するリアル

電通総研が国内SAPユーザー295社を対象に実施した最新調査(2025年度版)によれば、S/4HANAへの移行方針として「コンバージョン方式」を想定する企業が引き続き最多である一方、「第三者保守への移行」や「S/4HANA以外のERPを導入」といった選択肢を検討する回答も増加しています。S/4HANAへの一本道ではなく、自社にとって最適な移行先を改めて問い直す動きが広がっています(※3)。

(※3)https://www.dentsusoken.com/news/release/2025/1217.html/

外資ERPによるアドオン問題とコスト増加

SAP 2027年問題が深刻なのは、単なる「バージョンアップ」ではなく、S/4HANAへの移行が事実上の「新規導入」に近い工程を伴うためです。その最大の要因が、長年蓄積されたアドオン(カスタマイズ)です。

SAP・Oracle EBSのアドオン問題

SAP ECC 6.0やOracle EBSは、原則欧米の商慣習を前提に設計されたシステムです。日本企業が導入する際には、検収処理・手形決済・都度請求・掛取引など、日本独自の商取引慣行に対応するためのアドオン開発が不可避でした。

その結果、稼働から10年以上が経過した企業では、アドオンが数百本に膨れ上がっているケースも多くあります。S/4HANAへの移行時にはこれらのアドオンの大部分を作り直す必要があり、移行プロジェクトの規模と費用を大幅に押し上げます。バージョンアップのたびにアドオン改修が必要となる「負のスパイラル」も、外資ERPの構造的な課題として長年指摘されてきました。

移行費用「半数以上が5億円超」という現実

電通総研の最新調査(2025年度版・295社対象)によれば、SAP S/4HANAへの移行費用として「10億円以上」と回答した企業が26%で最多となり、「5億〜10億円未満」の24.7%が続いています。移行費用が5億円以上と回答した企業は全体の半数以上にのぼり、前年度からさらに高額化が進んでいることが明らかになっています(※3)。商社・卸売業のような複雑な業務フローを持つ企業では、このコスト負担はさらに重くなる傾向があります。

「Fit to Standard」という選択肢

アドオン問題の根本的な解決策として、近年注目されているのが「Fit to Standard(フィット・トゥ・スタンダード)」という考え方です。

Fit to Standardとは何か

Fit to Standardとは、従来の「業務に合わせてシステムをカスタマイズする」という発想を逆転させ、「システムが備える標準機能に業務プロセスを合わせていく」という導入手法です。アドオン開発を最小限に抑えることで、導入コストの削減・バージョンアップへの追従容易化・業務標準化の実現という3つの効果が期待できます。

また、標準機能ベースで整備されたデータはノイズが少なく均質であるため、AI活用の前提となる高品質なデータ基盤としての機能も果たします。2027年問題への対応を、単なる「延命策」ではなくDX経営への転換点として活かすうえで、Fit to Standardは重要な指針となります。

なぜ日本企業はFit to Standardが難しいのか

Fit to Standardの考え方は理解できても、実践が難しい理由があります。それは、外資ERPの標準機能では、日本の商慣習への対応が難しいところがあるため、「標準機能に業務を合わせる」こと自体が困難なことです。日本企業がFit to Standardを実現しようとしても、商習慣上どうしても外せない業務要件がアドオンとして残り続けます。その結果、「Fit to Standardを目指したはずが、気づけばアドオン開発の連鎖に」という事態が繰り返されてきました。

国産ERP(GRANDIT)がFit to Standardを実現できる理由

Fit to Standardを真に実現するには、日本の商慣習を「標準機能」として搭載したERPを選ぶことが前提条件となります。それを可能にするのが、国産ERP(GRANDIT)です。

日本商慣習を標準機能でカバーする強み

GRANDITは、検収・手形・都度請求・掛取引・元帳処理など、日本の商取引慣行を設計段階から標準機能として搭載しています。商社・卸売業に特有の複雑な業務フローにも、アドオン開発なしで対応できる設計となっており、まさに「日本企業のためのFit to Standard」を実践できる環境を提供しています。

アドオンレスで低コスト・スピード導入

SAP S/4HANAへの移行で5億〜10億円超のコストが見込まれるのに対し、GRANDITはアドオンを最小限に抑えた標準導入により、初期費用・保守費用双方のコスト削減が期待できます。また、SAP移行プロジェクトに比べて導入期間が短縮される傾向があり、2027年末の保守終了までの限られたタイムラインにも対応しやすいというメリットがあります。2027年問題への対応を機に、SAP・Oracle EBSから国産ERPへの切り替えを検討する商社・卸売業が増えている背景には、こうした現実的なコスト・スピードの優位性があります(※4)。

(※4)https://natic.sojitz-ti.com/service/erp/

2027年問題をDX経営の転換点にする

SAP 2027年問題は、「システムを延命させるか、移行するか」という技術的な選択の問題ではありません。その本質は、長年続いてきたアドオン依存・属人化・データ分断という経営課題に、正面から向き合うかどうかの経営判断です。

「Fit to Standard」という考え方を実践し、業務プロセスを標準化することで、アドオン地獄から脱出するとともに、AI活用を支える高品質なデータ基盤を構築することこそが、2027年以降の競争力を左右するERP戦略の核心です。

外資ERPへの高額な移行投資に踏み切る前に、日本の商慣習に精通した国産ERP(GRANDIT)という選択肢を、ぜひ一度ご検討ください。双日テックイノベーションの商社・卸売業向けERPソリューションは、2027年問題への対応から全社データ統合・DX推進まで、貴社のERP戦略をトータルでサポートいたします。

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