
「最近、電話してもお客さまが出てくれないんですよ……」
クレジットカードやローンカードを扱う企業の債権管理部門から、そんな声を聞く機会が増えています。
かつては、固定電話が主流で、自宅に電話すれば本人とつながる確率も高かったものです。
その後、携帯電話が普及し、より直接的な連絡が可能になったことで、「電話による督促」は長年、主力チャネルとして活躍してきました。
しかし、今やその携帯電話ですら「出てもらえない時代」になってきています。
目次
1. 若年層の“電話離れ”が進行中
背景にあるのは、特に若い世代を中心とした“電話離れ”です。
ある調査では、30代の約半数、20代ではなんと7割が「電話で話すのが苦手」と回答。
一方、60代以上ではその割合が3割以下と、世代間のギャップが非常に大きいことが分かります。
さらに10代にいたっては、そもそも電話を「かけたことがない」「電話が怖い」と感じる人もいるほど。
このままいけば、「電話をかけない・出ない人」がさらに増えるのは確実です。
2. 督促業務にも大きな影響が…
電話に出てもらえないだけでなく、オペレーターを採用・教育するハードルも年々高くなっています。
督促業務を電話に頼りきることが、現実的ではなくなりつつあるのです。
では、そんな中で債権管理部門はどう対応しているのでしょうか?
現在、初期督促に主に取り組まれているのが次の2点です。
- 督促チャネルの多様化
SMS・メール・IVR(自動音声応答)などを活用し、電話以外の手段も組み合わせて督促を行う。 - AIの活用
AIオペレーターによる自動応答やサポート機能を活用し、かける側・受ける側双方の心理的負担を軽減する。
3. 今回のテーマ:督促チャネルの多様化
特に注目されているのが、電話以外のチャネルを組み合わせた督促です。
多くの企業が、従来の人的架電や書面送付に加えて、SMSやメール、IVRを活用するようになっています。
中でも導入が進んでいるのがSMSやメール。
しかし、ここでも課題がないわけではありません。
たとえば、SMSに記載したURLを開いてもらえないケースが増えているのです。
フィッシング詐欺や迷惑メールへの警戒心が高まっていることが、その要因です。
名前を入れるだけでURL開封率が1.5倍に?
ある企業では、SMSの表題や冒頭にお客さまの名前(例:「〇〇様」)を入れる工夫をしたところ、URLの開封率が1.5倍に改善されたという事例もあります。
名前が入っていると「これは自分宛ての重要な連絡かも」と感じて、つい見てしまうのかもしれませんね。
ただし、誤送信時のリスクもあるため、名前の記載を採用するかどうかは、各社のセキュリティポリシーに左右されているのが現状です。
4. 注目されるLINEやチャットでの督促
SMSやメールの次に注目されているのが、LINEや専用チャットの活用です。
もちろん、LINEで“友だち”になっていない相手に突然メッセージを送ることはできません。
ですが、「LINE通知メッセージ」という仕組みを使えば、企業の公式アカウントから通知を送信し、URLを表示することも可能になります。
SMSやメールだと怪しまれてしまうURLでも、LINEの公式アカウントから送られることで、信頼性が高まり開封率が上がると期待されています。
※ただし、LINE通知では使用できる文言に制限があるため、メッセージ内容にひと工夫が必要です。
5. 督促も、時代に合わせて進化中
「電話すれば何とかなる」時代は、もう過去の話。
債権管理の現場も、今やチャネルの多様化とデジタル化が必須となっています。
電話に代わる手段として、SMS、メール、LINE、チャット……。
お客さまの行動や心理に合わせたチャネル選びが、これからの債権管理には欠かせません。
6. 次回予告
後編では、もう一つのトピック「AIの活用による督促業務の効率化」についてご紹介します。
お楽しみに!
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記事担当者:アプリケーション事業本部デジタルソリューション事業部 笠原 英司