こんにちは、穂苅智哉と申します。
現在、脱炭素の取り組みが一段と加速していることをご存知でしょうか。
最近のニュースをあげると、例えば温暖化ガス排出量の開示義務が2026年度から始まる中で、2025年3月期の有価証券報告書からわかったこととして、開示ができている企業がわずか2割しかいないということがあります。(※1)
更に、環境問題に感度がとても高いEU・ヨーロッパの炭素国境調整措置(CBAM)(※2)が2026年から本格実施される予定もあり、日本の経済産業省では有識者や関係業界等による情報交換を目的としたCBAMへの対応に関する委員会を設置して2025年5月に第1回委員会が開催されている状況です。
ここから、温室効果ガス排出量の正確な把握と管理は喫緊の課題とされています。その中でもScope1・2・3というものがあります。
(※1) https://www.nikkei.com/article/DGKKZO91008090Q5A830C2MM8000/
(※2) https://ondankataisaku.env.go.jp/carbon_neutral/topics/feature-02.html
Scope1・2・3とは?
Scope1・2・3というのは、2001年にWRI(世界資源研究所)とWBCSD(持続可能な開発のための世界経済人会議)が策定した、「GHGプロトコル」で定められた、温室効果ガス排出量を排出源別に分類する国際的な基準のことです。
※GHGとは、 GreenhouseGasのこと
まず、Scope1というのは、直接排出を指します。
つまり自社が直接的にコントロールできる自社の排出源からの排出量を指します。
例えば、会社の各拠点でのガスや重油の使用、車等のガソリンや軽油の使用、倉庫や物流センターでの燃料使用等です。
Scope2は、間接排出です。
つまり自社が購入した、他社から供給される電力・熱・蒸気による間接的な排出を指します。
例えば、オフィスビルでの購入電力使用、データセンター等の電力消費、倉庫や物流拠点での購入電力使用が当てはまります。
Scope3は、その他の間接排出です。
サプライチェーン全体を見た際の排出で、15のカテゴリーに細分化されます。複雑性が高い項目です。
例えば、調達した商品やサービスの製造時排出、輸送や配送による排出、出張や通勤による排出、販売した製品の輸送や配送、販売した製品の使用や廃棄時の排出、投資先企業での排出なども入ります。
この中で、商社・卸業にとって特にポイントとなるのは、実はScope3です。
なぜ、商社・卸業にとってScope3が重要なのか?
Scope3の管理は特に、避けて通れない課題です。なぜなら、商社・卸のビジネスモデル自体が「他社の製品を仲介する」ことを基本としているからです。
自社で製造業のように工場を持って製品を作るわけではない代わりに、世界中のサプライヤーから商品を調達し、それを最適な顧客に届けるのが商社の役割です。つまり、商社の事業活動そのものが、まさにScope3の領域といえます。
実際の数字を見ても、例えば双日が保有する資源権益において、全て燃焼させた場合のCO2は約2億トンという規模になります(※3)。これは双日の本社ビルの電気代や社用車のガソリン消費といったScope1・2の排出量と比べると、桁違いの大きさです。一般的に、商社ではScope3が全排出量の80-95%を占めると言われていますが、これは決して例外的な話ではありません。
冒頭でも取り上げましたが2026年度から、上場企業は有価証券報告書で温室効果ガス排出量の開示が義務化されます。これは「できれば対応したい」レベルの話ではなく、法的な義務です。現在はまだ任意開示の段階ですが、主要企業でも2割程度しか適切な開示ができていないというのが実情であり険しい道のりです。
これまで環境対応というと「CSRの一環」「イメージアップのため」といった位置づけで捉えられがちでした。しかし、法的義務化により、適切に対応できない企業は有価証券報告書への記載問題のリスクさえ生じます。
更に複雑なのが、EUの炭素国境調整措置(CBAM)への対応です。2026年1月から本格実施が始まるこの制度では、EU向けに輸出する製品について、その製造時のCO2排出量データの提出が求められます。
商社の立場で考えてみると、これまで取引していた海外の顧客から、「来年からEUに輸出するために、あなたが扱っている製品の温室効果ガス排出量のデータを教えてください」と言われたとき、即座に正確なデータを提供できるでしょうか。
データが提供できなければ、その取引は継続できない可能性があります。つまり、排出量管理は売上に直結する問題になってきているのです。
大手商社だけではなく、中堅規模の企業でもこの流れはとても重要なポイントです。
(※3) https://www.sojitz.com/jp/sustainability/policy/carbon_neutrality/
重要な「Scope1・2・3」は、企業の責任として把握・管理していくべき
「Scope1・2・3」は、商社・卸売業にとって単なる環境用語ではなく、2026年度からの法的義務、CBAM対応、そして今後の競争優位性を左右する重要な経営指標となっていくでしょう。
特に商社では、広範なサプライチェーンを持つ事業特性上、Scope3の正確な把握と管理が事業継続の前提条件となりつつあります。このためには、データ統合管理機能を持つシステムを利用することも重要で代表的なものはERPシステムです。
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〜以下、プロフィール〜
穂苅 智哉(ほかり ともや)
新卒でWordPressのトップ企業に入社し、WordPressを使ったWebサイト構築や、高速化ソリューションを導入したサーバーのマネージドサービスの営業として活動。その後、ディレクション、マーケティングを経験。その後SaaSサービスを開発、提供するグローバル企業にて、パートナー企業とともにビジネスを拡大していくための支援を担当。現在はWordPressやマネージドサービスを主軸とする企業にて、マーケティング業務全般を担当している。普段の仕事を行いながらWeb、営業、マーケティング、テクノロジーなどの情報発信も続けている。ーケティング業務全般を担当している。普段の仕事を行いながらWeb、営業、マーケティング、テクノロジーなどの情報発信も続けている。
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