現在、為替市場では大きな動きが見られています。自民党の高市早苗新総裁が新総理となりました。その影響から、日銀の早期利上げが困難になるとの観測が広がり、円相場は一時150円台まで変動しました。緩和的な金融政策を志向するとされる高市総理の誕生で、日銀の早期利上げが難しくなったとの見方が広がり、円売りドル買いが進んでいます。
このような為替変動は、商社・卸売業にとって経営に直結する重要な問題です。現在、多くの商社が想定為替レートを1ドル=140円から145円程度に設定している中(※1)で、実際の相場が150円台まで振れることは、想定を大きく上回る影響をもたらします。
こうした状況で頻繁に耳にするのが「ヘッジ取引」という言葉です。しかし、その具体的な仕組みや商社での活用方法について、明確に理解している担当者は意外と少ないのが現実です。本コラムでは、商社の為替リスク管理で重要な専門用語を実務目線で分かりやすく解説します。
(※1)https://www.asset-alive.com/news/?mode=show&seq=50455
ヘッジ取引とは?
ヘッジ(Hedge)とは、英語で「回避」を意味しており、ており、金融用語では「リスクを回避・軽減する取引」を指します。代表的なものとしては、現物株を保有している投資家が、今後の株価下落が予想される状況で、現物株を売却せずに先物等を売り建てることで、現物株に発生する評価損を先物等の利益でカバーしようとする取引があります。
商社においては、主に為替変動リスクから自社の利益を守るための取引として活用されます。
商社のビジネスモデルでは、以下のような為替リスクが常に存在しています。
仕入れ時のリスクとして:
- 海外サプライヤーからの商品調達時(ドル建て支払い)
- 契約から実際の支払いまでの期間での円安進行リスク
販売時のリスクとして:
- 海外顧客への販売時(外貨建て受取り)
- 契約から代金回収までの期間での円高進行リスク
在庫保有リスクとして:
- 外貨建てで調達した商品の在庫評価額変動
- 長期在庫での為替影響の累積
これらのリスク回避の方法の1つとしてヘッジ取引が行われます。
もし、ヘッジ取引をしなかった場合はどうなるでしょうか。1ドル140円が150円に円安が進行したケースを考えてみるとわかりやすいです。
1ドル140円で、3ヶ月後に1億ドルの輸入代金を支払うとします。3ヶ月後には1ドル150円になっていた場合、ヘッジありだと支払いは1億ドル * 140円 = 140億円となりますが、ヘッジをしていない場合は1億ドル * 150円 = 150億円となりますので、差分として10億円分多く支払わなければならなくなります。かなり大きいですよね。
これは、円高傾向になった場合には逆の考え方ができるので、将来を見据えたうえで適切に利用するということが重要です。
参考までに伊藤忠商事の「事業等のリスク」ページ(※2)を見たところ「ヘッジ取引」というキーワードが随所に出ていました。
(※2)https://www.itochu.co.jp/ja/ir/finance/risk_information/index.html
商社におけるヘッジ取引の種類
ヘッジ取引の種類にもいくつかあります。
1つ目は、為替ヘッジです。これは、海外取引で発生する外貨建ての売上・支払いに対して、将来の為替レートを事前に確定する取引のことです。先程出した例のイメージです。
2つ目は、商品価格ヘッジです。資源やエネルギー商品の価格変動リスクを管理するもので、例えば原油、LNG、鉄鉱石、穀物などの先物取引などがあります。
3つ目は、金利ヘッジです。長期借り入れや社債発行時の金利変動リスクを管理するためのものです。
いずれも「今と将来の不確実性リスク」を考慮した仕組みだということがわかりますね。
ヘッジ取引と商社 ERP
ヘッジ取引をはじめとする為替リスク管理用語は、商社・卸売業の経営陣から現場担当者まで、すべての関係者が正確に理解すべき重要な概念です。
ヘッジ取引を実施するかどうかは適切な現状分析と状況分析ができていることが大前提だということになります。不確実性が高まっている昨今において、様々な情報を統合して判断することの重要性はどんどん増してきていると言えるでしょう。
特に現在のような為替変動が激しい環境では、適切なリスク管理が企業の収益性を大きく左右します。
しかし、為替リスク管理を個別のシステムや手作業で行うことには限界があります。商社特有の複雑な取引形態にも対応できるERPシステムの導入こそが、変動激しい為替環境を乗り切る現実的なソリューションと言えるでしょう。
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