保険金支払い業務をもっとスマートに!生成AIとBPMで実現する効率化の可能性

保険業界の皆さん、日々の業務でこんな悩みを抱えていませんか?

請求関連の書類が山積みになり、ひとつひとつ目を通すだけで一日が終わってしまう…。案件ごとに状況が異なり、ベテラン社員の経験に頼らないと判断が難しいケースも多々ある…。複数の部署やチームと情報を共有しようにも、システムや担当が分かれていてスムーズに連携できない…。こうした現場の苦労は、多くの皆様にとって身に覚えがあることでしょう。

実は、これらの「現場あるある」な課題こそ、今注目のテクノロジーが解決の手助けをしてくれるかもしれません。そのテクノロジーとは、生成AIとBPM(ビジネスプロセスマネジメント)です。本記事では保険業界におけるテクノロジー活用のポイントを、分かりやすく解説します。

目次

  1. 現場で直面する課題:書類の山と属人化
  2. 保険金査定業務の本質:情報量と判断の難しさ
  3. ルールでカバーできること、AIの柔軟性が活きること
  4. ルール変更の壁:BRMSで乗り越える
  5. 現場を支えるソリューション例:双日テックイノベーションの取り組み
  6. 生成AIとルールとBPMの融合が拓く未来
  7. おわりに:テクノロジーは現場の味方

現場で直面する課題:書類の山と属人化

まず、保険金支払い業務の現場で多くの担当者が直面している課題を整理してみましょう。皆さんも思い当たる点があるのではないでしょうか。

紙の書類やデータが山積み:請求書、診断書、事故報告書など、扱う書類やデータは膨大です。手作業で一つ一つ確認するのは時間がかかり、ミスの原因にもなります。

ノウハウの属人化:経験豊富な同僚の「勘どころ」に頼って判断しているケースが多くありませんか?人によって判断基準が微妙に異なったり、ベテランが不在だと対応に困ったりすることもあります。

* 部門間の連携の難しさ:支払い査定には、調査部門や医務スタッフなど他部署との協力が欠かせません。しかし、部署ごとにシステムが異なったり情報共有がスムーズでなかったりして、プロセスが滞ることがあります。

これらの課題が積み重なると、肝心の査定判断に十分な時間を割けなかったり、お客様への支払いに時間がかかってしまったりします。そこで登場するのが、業務を効率化するためのテクノロジーです。次の章では、保険金査定業務の本質と、どの部分をテクノロジーでサポートできるのかを考えてみます。

保険金査定業務の本質:情報量と判断の難しさ

保険金の支払い査定とは、一言で言えば「集めた情報をもとに、正しい支払い判断を下すこと」です。しかしその裏側には、多種多様な情報を整理し、規定や契約内容と照らし合わせ、妥当な判断を導くという、とても高度なプロセスがあります。

例えば自動車保険の事故案件を考えてみましょう。事故の状況報告、警察の調書、修理見積もり、過去の類似事例、契約者の補償内容…確認すべき情報は枚挙にいとまがありません。生命保険なら診断書やカルテの内容、治療経過の確認など、医療知識も求められます。情報量の多さと内容の専門性が、査定業務を難しくしている大きな要因です。

さらに、集めた情報から微妙な判断を迫られる場面も多いでしょう。「このケースは約款上グレーだが、過去の支払い事例では認められているか?」「顧客対応としてどこまで柔軟にすべきか?」といったように、単純な〇×では片付けられない判断が日常茶飯事です。熟練者の経験に裏打ちされた判断力が求められるゆえに、新人にはハードルが高く、ベテランに負荷が集中する原因にもなっています。

要するに、保険金支払いの査定業務は、「膨大な情報をいかに整理し、いかに的確に判断するか」が肝となります。ここにテクノロジーの出番があります。情報整理やパターン化が得意なシステムと、柔軟な判断が可能なAIを上手に使えば、この「情報整理」と「判断」の両面で現場を助けることができるのです。

ルールでカバーできること、AIの柔軟性が活きること

業務をテクノロジーで効率化すると聞くと、まず思い浮かぶのは「ルールベース」の仕組みではないでしょうか。例えば、あらかじめ決められた支払い基準をシステムに組み込んでおけば、機械的な判断は自動化できます。実際、多くの保険会社で簡易な支払い可否判定にスコアリングやチェックリストといったルールベースの仕組みが使われています。

ルールベースが威力を発揮するのは、判断基準が明確でパターン化できる領域です。たとえば「入院日数がX日以内なら給付金支払い」「修理費用がY円以上なら専門調査を依頼」といった具合に、条件が定まっているものはルールに落とし込めます。これによって日常的な定型業務はスピードアップし、担当者は機械に任せられます。

しかし、一方でルールだけでは対処しきれないケースも多々あります。世の中の事例は千差万別で、すべてを網羅するルールを用意することは現実的ではありません。ここで頼りになるのがAIの柔軟性です。 最近話題の生成AIは、大量のデータからパターンや意味を学習し、初めて見るようなケースでも過去の類似点を見つけて対応策を提案したり、文章の要約や判断材料の抽出を行ったりできます。例えば、膨大な事故報告の文章をAIが素早く読み込んで要点をまとめ、担当者が判断しやすいように整理してくれる、といった使い方が考えられます。また、AIエンジンは不明点がある場合に「顧客から〇〇の追加情報を取得してください」と不足情報を指摘してくれたり、データ上の異常なパターンをハイライトしてくれたりすることもできます。

要するに、ルールベースなシステムとAIにはそれぞれ得意分野があります。明確に定義できる判断はルールで自動化し、パターン化が難しい部分や膨大な情報の整理はAIの力を借りる。このハイブリッドな使い分けが、保険金支払い業務を効率化するポイントとなるのです。

ルール変更の壁:BRMSで乗り越える

ルールベースの仕組みを導入するときにもう一つ考えておきたいのが、ルールのメンテナンスです。保険商品は新しくなったり、約款や法律も変わったりします。その度に支払い判定の基準(ルール)も見直しが必要です。ところが、一度作った仕組みに埋め込まれたルールを後から変更するのは、意外と大変な作業です。

そこで活用されるのがBRMS(ビジネスルール管理システム)と呼ばれる技術です。BRMSを使うと、システムからルールを切り離して一元管理できます。専門の画面で「この条件をこう変える」と設定すれば、プログラミングなしで即座に全体の判定ロジックに反映されます。これにより、現場の担当者でも直感的にルールを管理でき、ルール変更にIT部門の手を借りる必要が減ります。 BRMSのメリットは、何と言ってもスピーディーで柔軟なルール変更が可能になることです。新商品発売に合わせて支払い基準を追加したり、不正請求対策の基準を強化したりといった変更を素早くシステムに反映できます。また、ルールが一元管理されていることで、「どのルールをいつ誰が変更したか」も履歴として残り、ガバナンス面でも安心です。

もっとも、BRMSを導入すれば万能かというと、限界もあります。結局のところ、人が定義できるルールには限りがあるため、BRMSで管理するルールも網羅性には限界があります。また、ルールが増えすぎると逆に管理が煩雑になる恐れもあります。そこで大事なのは、「ルールでカバーすべき部分」と「AIに任せる部分」のバランスです。BRMSで管理する明確なルールはシンプルに保ちつつ、イレギュラーなケースや複雑な判断はAIのサポートに委ねるという棲み分けが有効でしょう。

現場を支えるソリューション例:双日テックイノベーションの取り組み

では、具体的にどのようにルール管理やAI活用を現場に取り入れていけば良いのでしょうか。その一例として、弊社の取り組みを紹介します。双日テックイノベーションは、保険業務で活用できるBPM製品「Natic BPM Suite」を提供しており、保険業務の効率化ソリューションに力を入れています。BPM(ビジネスプロセスマネジメント)のツールとルール管理の仕組みを組み合わせて、保険金支払査定業務をトータルに支援しています。

たとえば双日テックイノベーションの提供する「保険金支払査定ソリューション」では、保険金支払いまでの一連の流れをワークフローシステムでつなぎ、各ステップで必要なチェックを自動化できます。請求受付から支払い可否の査定、さらに上長承認や支払処理まで、一貫したプロセスをシステム上で管理することで、「どの案件が今どの段階か」「ボトルネックはどこか」がひと目で把握できます。これにより部門間の情報共有がスムーズになり、プロセス全体の可視化と効率化が実現します。

さらに注目すべきは、このソリューションがルールエンジンと呼ばれる仕組みを実装できる点です。これは先述のBRMSに近い考え方で、支払い判断の細かな条件をシステム上で管理・変更できるようにするものです。例えば「〇〇の場合は調査担当に回す」「△△の条件を満たせば自動承認する」といったルールを登録しておき、状況に応じて容易に追加・修正できます。双日テックイノベーションでは、こうしたルール設定を現場の声を聞きながらサポートしてくれるため、「システムを入れたけど結局カスタマイズが大変」という事態を避けることができます。

単体のテクノロジー導入では一連の業務全体を効率化するには限界があることを、当社は何度も経験しています。部分的なテクノロジー活用では、特定のタスク(例:査定)のみの効率化にとどまり、END to ENDでの業務改善にはつながりにくいのです。そこで重要になるのが、業務全体のプロセス整理と設計です。これらを最適なプロセスとして構築するのがBPMの役割です(BPMが業務プロセス全体を司る)。その上で、これまで人の知見やマニュアルでの対応が必要と考えられていたタスクをルールや生成AIを使って自動化し、更に省力化する。この組み合わせにより、一連の業務プロセスをEND to ENDで効率化し、スループットを各段に向上させることができるのが、当社のソリューションです。

双日テックイノベーションでは、現場の業務に即した形でテクノロジーを導入することを得意にしています。当社には、金融機関向けの業務システム構築に携わってきたノウハウがあり、現場目線でプロセス改善を支援するサービスを提供いたします。

生成AIとルールとBPMの融合が拓く未来

最後に、生成AIとルールベースの仕組みを組み合わせた将来的な展望について少し触れてみます。ルールとAI、それぞれの強みを活かしたハイブリッドなアプローチは、今後ますます進化していくと考えられています。

例えば、AIが査定の結果を提案してくれるようになるかもしれません。過去の支払いデータや不払い事例をAIが分析し、示唆を与えてくれるイメージです。人間の担当者が気づきにくいトレンドや盲点も、AIの分析であぶり出されるでしょう。それを受けて担当者がルールを追加・修正し、BRMSに反映させることで、常に最新の知見を取り込んだ判定ルールを維持できます。

また、生成AIによる自動応答や報告書作成も期待されます。お客様からの問い合わせに対して、契約内容や進捗に応じた適切な回答をAIが自動で生成したり、支払い査定の結果を担当者に代わって文章にまとめてくれたりすれば、現場の負担は一段と減るでしょう。実際、AIを活用した保険金請求の自動化により、請求処理時間を最大90%削減できた例も報告されています。業務プロセス全体をBPMが管理し、その上で生成AIとルールを組み合わせる、こうした効率化が進めば、担当者はより複雑な案件のフォローや顧客対応など、人間ならではの付加価値の高い業務に集中できるようになります。

さらに今後は、プロセス上のタスクに関して、AIエージェントが必要な情報を適切に取得し、判断するような自動化を目指していきます。これにより、将来の労働力減少という社会問題に対するソリューションを提供していくことが可能になると考えています。 重要なのは、テクノロジーの進化によって人間の仕事が無くなるのではなく、より価値の高い仕事にシフトしていくという点です。ルールエンジンもAIも、煩雑な作業や膨大な情報処理を肩代わりしてくれる頼もしい存在です。私たち担当者は、その助けを借りて、最終的な判断や人に寄り添った対応といった「人にしかできない部分」に注力すればいいのです。

おわりに:テクノロジーは現場の味方

生成AIやBPMといった最新テクノロジーは、一見とっつきにくいかもしれません。しかし本稿で見てきたように、その目的はただ一つ、「現場の業務をラクにし、より良いサービス提供につなげること」にあります。複雑なことをシンプルに、時間のかかることをスピーディーに、そして属人化した知見をみんなのものに――テクノロジーはそんな現場の頼れる味方なのです。

保険金支払査定業務のご担当者の皆さんも、ぜひ怖がらずにこれら新しいツールとの協働を検討してみてください。最初は小さなステップでも、業務フローの一部を自動化してみる、ルール管理を見直してみる、といった取り組みから始めてみると良いでしょう。現場の知恵と経験にテクノロジーの力が加われば、きっと今まで以上にスマートで安心な保険金支払査定業務が実現できるはずです。

双日テックイノベーションは、貴社の業務改善を全力でサポートいたします。ぜひ一度、お気軽にご相談ください。